家族性大腸ポリポーシス患者と家族の会 - ハーモニー・ライン


会へいただいた言葉
Harmonyの発刊をお祝いして

宇都宮 譲二 (うつのみや じょうじ)
兵庫医科大学名誉教授
特定医療法人社団順心会 津名病院名誉院長

人は人々の中に居て孤独であるとき、たった一人の時より、むしろ不幸になります。

それを救ってくれるものはお互いの「思いやり」の気持ちであり、わが国固有の文化でもある「和」すなわち「協調」“harmony”の心であると思います。

「土井悟」さんはその心を持って皆で手をつないで行こうと考えて居られたので「ハーモニー・ライン」が出来たのだと思います。

そこには患者さん達自身の純粋な願いがあったからこそ医療関係者やその他の共鳴する人々の心を動かして成るべくして自然に発生したのです。

その結果、そこに多くの人々が心豊かな生活感を分かち合うために平等に参加してこのような会になりました。

昭和50年頃のこと、たった一人で社会の支えを訴え続けておられた「田中わか」さんに思いを馳せています。

そして四半世紀を経た今日、当時は夢の又夢であった排便機能温存手術も完成され、遺伝子も発見されました。

しかし、私にとってそのいずれにも劣らず感動的な出来事は多くの人々の心が一つになり、この会が結成されたことです。

何故ならば、社会の心を一つに纏めることは一つの細胞変異、一人の患者さんの病気との対応以上に難しいと痛感していたからです。それが達成された今、今後加速度的に進歩する医学、医術を考えると21世紀は皆様にとって希望に満ちた社会となることは疑いありません。

今後皆様がこの素朴な初心を忘れず連帯のラインが無限につながる事を祈念してやみません。


人間は生物の一種であること

武部 啓 (たけべ ひらく)
近畿大学原子力研究所副所長、京都大学医学部名誉教授

生物と無生物のもっとも大きな違いを表すキーワードは多様性です。 物理や化学の分野では、 1メートルは世界中まったく同じ長さであり、世界中の水はH2Oです。 ところが、生物は同じ種類でも、 個体ごとに違います。 世界中の人間はひとりひとり顔が違い、性格が違い、考え方も違うのです。

このことを生物学では多様性と言います。 多様性は遺伝子の組み合わせが、一人一人違うことと、 環境(教育なども含みます)によって生じます。 遺伝子が全く同じ一卵性双生児でも、決して完全に 同じ二人ではありません。 基本的人権とは、そのような多様な人々が、互いに全く対等であるということです。

たまたま現在の人間社会では、生きていくのにすこし不利な遺伝的な特性をもって生まれた方もあります。

人間とはそのような人々もすべて対等な人間であるということを認識している生物であり、それが人間の理性とか文明といった言葉で表されるもの、すなわち人間がそこまで進化した生物であることの証しなのです。

最近の遺伝子研究の進歩は、30億対もの遺伝子構成成分の中のたった1個が変化しただけでも、 重い遺伝病と呼ばれる、生きていくのに不利な条件を生まれながらにもっている人達が多数存在することを明らかにしました。そのような人達が生まれることは、人間が生物の一種であるから当たり前のことなのです。

このことの確認は、20世紀のあらゆる科学、あるいは文化の最大の発見であり、成果であったと言えましょう。

優生学という学問の隠れみのを着た思想が、ユダヤ人を地球上から抹殺しようとし、優れた人間を選抜できると主張したのは、ついこのあいだのことです。遺伝子、DNAの研究に支えられたヒト遺伝学がそれを完全に否定したのは1970年以後でした。そして21世紀を迎えた今、遺伝子操作という手法の進歩が、優生思想を復活させるおそれをひそかに感じている研究者は私だけではありません。それを防ぎ、打ち破るには一般市民の理解と支持が必要です。

ハーモニー・ラインの皆様も、勇気をふるって大きな声を出してくださるよう期待します。


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